第1回「日本の医療を語る」

日本の医療制度は、世界に冠たる皆保険制度があり、WHOをはじめ世界各国からの評価もトップランクといわれる。 その一方で、急速に進む少子高齢化を前に、医療改革が議論されている。
  今後の日本の医療改革はどのような方向に進むべきか。 東京女子医大医学部教授(医療政策)の渡辺俊介客員教授が、公益社団法人日本医師会 会長に訊いた。

 
 
1.日本医師会の政策
      ~安全な国民皆保険を~ (4:59)




日本医師会は1916年に北里柴三郎博士らによって設立された医師の医療活動を支援する、民間の学術団体だ。
   会員数は約16万人と日本の医師総数の約56%が加入している。日本医師会は、国民の安全な医療に資する政策か、公的医療保険による国民皆保険は堅持できる政策かの2点が政策の判断基準となる。国民皆保険は、国民全体が安心して生活ができ、かつ国の発展と社会の安定を支えてきた制度だ。

 

 
 
2.医療提供体制の改革①
      ~医療・介護の連携~ (4:51)




日医総研の調査によると、国民が考える医療の重点課題は、「夜間や休日の診療や救急医療体制の整備」「高齢者などが長期入院するための入院施設や介護施設の整備」の2点が、上位を占めている。
   こうした課題には、医療と介護両面からカバーが必要であり、現在、地域包括ケアシステムという医療と介護の橋渡しを行うシステムを整備している。

 

 

国民が考える医療の重点課題


出典:日医総研

 
3.医療提供体制の改革②
       ~かかりつけ医で地域連携を~ (9:29)




かかりつけの医師がいる人はいない人に比べて受けた医療に対する満足度が 高い傾向がみられる。福岡県では、診療所と中小病院に併せて4000人近くいるが、そのなかで約2500人がかかりつけ医として医療活動をしている。
   高齢化社会において、かかりつけ医を中心に地域ごとに切れ目のない医療と介護を提供してくことが重要だ。今後は在宅医療への取り組みが重要なテーマとなるため、かかりつけ医の研修は、医療の地域連携をスムーズにさせる意味でも重要になる。

 

かかりつけの医師の有無


出典:日医総研

 
4.高齢化と地域医療体制
      ~コミュニティ復興、その中心に医師を~ (5:53)




高齢化社会は、コミュニティをどう作るかという問題だ。コミュニティのなかに必ず医師が居て、重要な役割を担っているという意識づけが必要だ。
   日本医師会は、地域の事情を汲み取った、地域医療の復興をテーマとして掲げている。

 

 

かかりつけ医を中心とした
医療・介護の提供相関図



出典:日医総研

 
5.医療費制度①
      ~保険料の公平化と効率化~ (11:17)




現在、国民医療費は、約38兆円。
その財源は、患者による一部負担、保険料、税金で賄われている。
社会保険には、組合健保、共済組合、協会健保の3種類あり、国民健康保険には、全国市町村別に国民健康保険があり非常に多様化し、それぞれにおいて保険料率が異なっている。
その意味で所得に応じて負担してもらう仕組み(公平性)が必要だ。
社会保険については、世代間格差が問題になるが、若年層は成長するまで受けた親の支援をすこしづつ返していく、と考えるべきではないか。
   医療費を増大させないためには、健康診断が重要だ。
   健康診断による生活指導で病気の早期予防をはかり、健康寿命を延ばすことができる。現在、乳幼児の検診、学校検診、産業検診、高齢者検診とばらばらに実施されているが、生涯保健として一本化する必要がある。

 

 

国民医療費の推移


出典:平成24年度厚生労働白書

 

国民医療費の構造


出典:平成24年度厚生労働白書

 
6.医療費制度②
      ~ジュネリック医薬品、安心提供ならば医師も使用~ (6:35)




現在、医療費の約55%が人件費、薬や医療機材が約25%、 その他のお金で医療機関の建築費などが賄われている。
人と人のなりわいが医療の本質と考えた場合、モノの値段を如何に安くするかが重要になる。薬や医療機材が約25%というのは、諸外国と比較して高く、下げていく必要がある。
   ジェネリック医薬品については、患者にとっても医師にとっても安全性はもちろん、安心して使える状況をつくることが必要だ。

 

 

後発医薬品の
国内市場シェア推移



出典:厚生労働省

 

各国の後発医薬品シェア


出典:厚生労働省
出所:中央社会保険医療協議会
薬価専門部会(第82回)資料

 
7.混合診療について
      ~枠内で併用の拡大を~ (6:22)



保険外併用の全面解禁という議論があるが、 安全性と有効性の確認をして、併用療養と保険で一緒に使うということならば反対はしていない。

日本で総合的診療をしている医師は、専門性を持ちながら総合的な診療能力をもっている。こうした医師がかかりつけ医のモデルであり、日本の目指すべき方向である。