第3回「日本の医療を語る」

 今後の日本の医療改革はどのような方向に進むべきか。第3回目は、学習院大学経済学部の遠藤久夫教授に訊いた。

 
 
1.社会保障制度改革国民会議での改革案について    (7:13)



医療提供体制と医療保険制度の両方について議論された今回の改革案は、大きく分けて3つの視点があると考えている。
一つ目は、介護保険の高所得者の自己負担引き上げなどこれまで様々な報告書で両論併記となっていた内容に、一定の方向を示したという点。
二つ目は、医療提供体制に関して、病院機能の分化や連携や在宅医療などをよりスピード感を持って推進することを求めたという点。
三つ目は、国民健康保険の運営業務を都道府県へ移行するなど、新しいコンセプトを提案したという点がある。

 

 
 

2.医療提供体制の改革案について   (4:39



今回の報告書では、かなり踏み込んではいるが、報告性を示しただけ。様々な問題が絡んでいると考える。
増加する医療需要に対応するには、病床数を増やす方向ではなく、その稼働率を上げていくこと。そのためには、病床ごとの機能を分け連携を図っていくことが必要である。
それに加え、在宅医療の充実、連携も重要である。

 


 
3.病棟の機能報告制度について   (8:09)



機能を分け連携を強化する取り組みは今までもやってきたが、地域特性を反映するという視点があまりなかった。今回の報告書では、それぞれの地域ごとの需要と供給を把握し、その調整をすることを打ち出した。その象徴が、都道府県に権限を持たせるということ。
どういう機能の病床があるのか各知事に報告させ、その上で医療需要の把握、そして医療供給とのバランスをとることが大切になってくる。なかなか先が長い議論になると思う。

 

 

 
4.病床の機能分化、地域包括ケアに関して   (3:39)



病床の機能分化を進める中では、地域内の需給バランスの調整がどうしても必要。そこで都道府県の役割が重要になってくる。
もう一つは、地域包括ケアにおける介護と医療の関係。言うまでもなく双方の連携は不可欠だが、その調整を誰がするのかなど課題が多い。

 

 

 

 
5.消費税増税分で基金をつくる発想   (4:44)



医療政策のツールとして、診療報酬・基金などのインセンティブと、規制的手法が存在し、それぞれのメリット・デメリットがある。それらを組み合わせ、できるだけいいものにしたい。診療報酬は基本的に全国一律だが、補助金・基金は、地方の事情に合わせる自由度があるため、補助金が適しているのでは。インセンティブと規制的手法との様々な組み合わせの中で、その中で都道府県をどのように絡めていくかという考え方である。

 

 


 
6.国民負担を引き上げる医療保険の改革案について  (5:14)



医療保険は、財政面から議論するということが非常に大事だと考えている。
増加する医療費に対し所得は増えず、その乖離が起きてくる。医療費の伸びを抑えるために、これまで多くの公費が投入されてきた。そのため、この議論は財政再建と密接な関係がある。

 

 

 
7.医療費における公費負担について  (7:01)



現在、日本の医療費負担は、他の先進国と比べると低い水準にあり、今後、医療費が増える中でこのまま公費の割合を増やしていくべきか議論が必要。
保険料の引き上げには、事業者負担増への企業からの反発と、現役世代の負担増の懸念があり、合意の形成が難しい。

 

 

 
8.医療費の自己負担について   (5:30)



低所得者の増加、高額医療の誕生などがあり、自己負担が厳しいという意見が出てきた。
今回の報告で、自己負担増の面では、70~74歳の自己負担2割引き上げなどを挙げたが、一方で低所得者への配慮として、高額療養費制度の見直しなども提案されている。
医療費負担については、これまでも様々な方法が議論されてきたが、今回は消費税増税分を見込んだリアリティのある議論になっている。