「日本の社会保障制度を考える」

 今後の日本の社会保障制度はどのような方向に進むべきか。東京大学高齢社会総合研究機構の辻哲夫特任教授に訊いた。

 
 
1.東京大学高齢社会総合研究機構とは    (5:29)



ジェントロジーという「高齢化をどう受け止めるか」をテーマにした学問の本格的な研究教育組織である。
ジェントロジーは、高齢化社会での「個人の老い」と「社会のありかた」の2つの側面を組み合わせたもので、医学系をはじめ、社会系、工学系など様々な分野の学者がアプローチするという学問。千葉県柏市や福井県坂井地区、そして東日本大震災の被災地など、様々な特性を持った地域で、課題解決型の研究を進めている。

 

 
 

2.千葉・豊四季台モデルについて    (18:35)



「それぞれの地域で老い、住み続けられる社会」を目指し、研究をしている。
フィールドとしている豊四季台団地は、駅から車で10分・高齢化率は40%という、都市型の高齢化モデルである。
最大のポイントは、在宅医療。柏市と市医師会の協力を得て、在学医療のシステムづくりや、医療と介護の連携などの具現化を目指している。具体的には、医師の在宅医療研修や、様々な職種が連携する地域医療拠点の設置、コンピューターシステムの構築などを行っている。また、団地内にサービスつき高齢者向け住宅を誘致し、その1階に、団地内外を担当する24時間ケアシステムを設置。これが今年5月に開業する。
 これとあわせて、高齢者の就労にも取り組んでいる。

 


 
3.豊四季台モデルは他地域でも実現可能なのか   (6:40)



今回のプログラムはとても幸運で、柏市と市医師会に優秀なリーダーがいた。このモデルにおいて、最初に火をつけたのは我々だが、こうして全国的にも有名になったのは、地域の各機関の力である。
在宅医療の導入には、市が主役になり、医師会と手を組むこと。そして、制度改革も必要である。日本の自治体水準は高いので、やり方がわかり、自分の任務だと認識すれば出来ると確信している。また、日本の医師には、多くの職種と連携するポテンシャルがあると感じている。

 

 

 

4.“かかりつけ医”実現へ追い風   (5:02)



“かかりつけ医”実現へ追い風 5:02
 高齢化社会は、医療の進歩の成果である。その結果、その先のケアが必要になった。日本医師会による、かかりつけ医実現に向けた動きは、その必然に目を向けた結果だと思う。
 大きなポイントは「論理化する」ということ。例えば、新商品の開発は手間がかかるが、製法がわかってしまえば大量生産が可能になる。論理化して実行するという経験を、日本は何度も経験してきた。
在宅医療に動向した医師が、「病気を治すだけでは解決しないとわかった。家族の結束を感じた。」と話していた。こうした経験を通して、「病気を治す」から「家族を支えたい」という意識へ変わっていく。そうしたシステムを作っていけば、日本の医療は変わっていくと思っている。

 

 

 

 
5.生きがい就労について   (3:51)



歩行スピードで比較すると、1992年当時の65歳のスピードは、現在の76歳に相当する。これだけ状況が変化しているにも関わらず、制度は65歳定年のままで、状況とのずれが生じている。その意識改革が、まず重要である。
 超高齢化社会は、地域で様々なところに労働力を必要としているが、若い人がいない。保育所や介護施設など、小さなところに必要な仕事がたくさんある。第一線を退いた後は地域に戻り、もうひと仕事するというライフスタイルへの意識改革が必要であると考えている。

 

 


 
6.高齢者の仕事を見出していくこと  (2:51)



例えば保育所などで、朝・昼寝・見送りなど、短時間だが人が必要な場面がある。そうした時間を高齢者に担ってもらうといった工夫が必要である。
また、働くことで賃金をもらうと、心にハリが出る。コーディネートシステムをどう作るかは、最終的に制度改革。東大では、そういった働きかけを行っていく。

 

 

 
7.東大高齢社会総合研究機構の今後 (1:25)



研究機構に大学院が出来る。地域を作っていく中で、様々な学問の専門性をどのように生かしていくかという研究を、より本格化していく。そして、これまでのフィールドでのプログラムをさらに発展させていく。

 

 

 
8.これからの地域包括ケア・社会保障制度のありかた  (3:05)



どのように老いていくか、我々自身の認識も問われてくると考えている。柏では住民向けに、地域啓発プログラムを開発している。具体的には、看取りの体験者などを招いての勉強会などを実施している。